生活と信仰
ファーストネーションズとは | 北西海岸インディアンの分布図 | 代表的な部族と特徴 | 代表的な作品と特徴 | 社会構造 | 漁業と狩猟の技術 | 捕鯨の技術 | 戦闘について | 丸太カヌー | 木工細工 | カヌーの種類 | 住居 | 衣類 | 信仰と儀式 | ポトラッチと呼ばれる行為 | シンボルの意味 | トーテムポール大辞典 | ドリームキャッチャー | |
住居 | |
A: Tsimshian , B: Haida , C: Nuxalk (Bella Coola), D: Central Coast , E: Nuu-Chah-Nulth (Nootka), F: Coast Salish クリックすると拡大 太平洋岸種族によって建てられた多くの家は、材料に使った杉の木と同じくらい大きなものでした。記録されている最大の住居の1つはコーストサリッシュ族のもので、長さ170mで幅は20m以上もありました。家のサイズにかかわらず、どの部族の基本的な家の構造はすべて同じで、丸太のログハウスで外壁は厚い杉板が垂直か水平どちらか向きに付けられていました。ハイダ族、ティムシャン族および北部クワキュトル族は、切妻屋根を備えた巨大な長方形の家を建てました。これらの住居の外壁は直立した厚板を土台にはめ込んであり、大きな柱が家の正面や背後に巨大な梁や板で支えられてつけられました。そして海岸に面する側の出入り口は楕円形でした。特に、ハイダの家は、外側の壁画をペイントし、玄関と化粧柱は一家の紋章を複雑に掘り込んで作られました。ヌートカ族やベラクーラ族、サリッシュ族は、ある漁場からある漁場へと規則的に移住する生活を送ったので、彼らの住居は水平に貼った厚板の外壁が容易に取り外し可能になっていました。新しい地では、剥がされた屋根と外壁の厚板をもう一度、柔順な細枝で作ったロープで新しい骨組みに縛り付けました。 家の内部のレイアウトは部族ごとに異なりました。家が広かったので、数人の家族にそれぞれ個別の生活圏と炉床が割り当てられました。サリッシュ族の最大の家などは個々の壁で仕切られた部屋から成りました。またハイダ族は住居の内壁に木製のベッドを作りました。クワキュトル族、ベラクーラ族、ヌートカ族も、壁に沿って棚を設けていて、寝たり、貯蔵に使用しました。 大抵、人々は織り込まれた杉の樹皮製のマットに座りました。そしてベントウッドボックスは、衣類や儀式のマスク、ロウソクウオの油やクジラの鯨脂を収納するために頻繁に使用されました。あるベントウッドボックスは非常に頑丈で防水処理がなされ、料理道具としても使用することができました。ハイダ族が作ったベントウッドボックスはヌートカ族やクワキゥトル族のものよりも角張っていて低く幅広のものであった。ハイダ族は、箱の上部、底および側面に彼らの一族紋章を刻みました。ヌートカ族とクワキュトル族の高く狭いコンテナはラッコ歯がはめ込み細工で飾られました。 皿は通常、細長い桶のような形で食べ物の味を損なわない「はんの木片」にくぼみを彫って作ったものでした。さじはヤギの角か木で作られました。
|
|
衣類 | |
天候が許すかぎり、男たちは裸になりました。 ティムシャン族の女性は、シカ皮のスカートを着用していました。しかし、他の部族の女性のスカートは、柔らかい繊維を細切れにされた杉樹皮を編みこんで作れられていました。男性も女性も、どんな種類の履物も持っていませんでした。雨の日には、樹皮製の雨用のケープと、小ぎれいな根でできたつば広帽を着用していました。ティムシャン族の帽子はとても印象的な模様で縫われ、ヌートカ族の場合は捕鯨する場面をペイントで描きました。
ヌートカ族とクワキウトル族は黄色の杉の樹皮で織られた特殊な長衣を着用しました。彼らの衣服にはシロイワヤギの羊毛と織り交ぜられたものや、最も豪華なものは、ラッコ毛皮のふちが付いていました。他にも高く珍重された衣服は、アラスカのチルキャット族の毛布で、すべての沿岸部族に人気のある貿易品目でした。深く縁どられたひざ掛けは彼らの儀式の礼服に相応しく、華美に染色されて刺繍されていました。 |
|
信仰と儀式 | |
太平洋岸部族は、人間と動物界には密接な関係があると強く信じていました。彼らの聖る儀式の中で使用される変身マスクの多くはこの関係を例証しました。これらのマスクは巧妙に作られていて着用者がひもを操ると、マスクが開いたり閉じたりして、人間の顔と動物の面が現れる仕組みになっていました。様々な家系の紋章はよく動物を基にしたものだった。べラクーラ族とクワキゥトル族は、彼らの祖先は動物の外套とマスクをつけて天から降りてきたと信じていました。
太平洋岸部族は皆、サケは本当は超自然的な生き物で海中では人間の姿していると信じていました。サケの産卵が始まった時、海に住んでいる「鮭の人」は、魚になり人間のために自らをいけにえとして捧げたと考えられ、このような信仰は、その年の最初のサケを称えて、最高位の酋長に対する演説や贈り物する歓迎式典など、多くの儀式が開かれました。そのサケに対する尊敬は、骨を一つ残らず水に戻して「サケ人々」を生き返らせると信じられるほど徹底していました。 将来の展望を探求する若者は、動物の姿をした守護神を崇拝しました。特殊な職業に付くものは、その特別の精神によって励まされました。例えば、カヌー製造者は守護神としてキツツキを、漁師はサケを、ハンターはオオカミを、シャーマンは神話上の大ヘビを守護神としました。太平洋岸のシャーマンは多様な治療儀式を行いました。長髪のハイダ・シャーマンは、病気で道に迷った魂を吹き飛ばすために特殊な骨の管を使用しました。セイリッシュ族のシャーマン達は、精神のカヌーで、彼らのさまよえる魂を探す旅行記を演じました。魂を盗んだ海の精霊と戦うために、ヌートカ族のシャーマンは海の底に潜りました。 沿岸の民族の儀式への愛は、霊が暮らしの中にさまようと思われた冬の間にその頂点に達しました。冬の5か月は、海からの豊富な収穫の蓄えによって、ダンスや演劇を堪能する十分な時間があったからです。冬の儀式は、強い守護神の保護を獲得するために、辛い成人式を乗り越えたメンバーで結成した秘密結社でたびたび執り行われました。一般に、高位の人々だけがこれらの組合に属し、精神の伝授を再現した演劇に参加することができました。これらの儀式は、3つの独立した秘密結社を持っていたクワキュトル族に高く発展させられていました。 クワキュトル族の演劇は、たいまつの火の明りの暗示力を利用して幻想の世界の舞台効果を生じさせました。壮大に彫られた変身仮面をつけた役者は、聴衆の中で様々な人格を形成して演じることが出来ました。そして床に空いた落とし穴を使って、素早く身を消失させる演出もありました。また床板に隠された中空の海藻を使って鳴き声も演じられました。ロープで吊った怪物の人形が舞台を横切って飛び回り、木製のカニはコロの上を忙しげに動き回っていました。
|
Published under the authority of the Minister of Indian Affairs and Northern Development.Ottawa 1996